来るのがっているか



「あの方は一人で?」

「テジャン、如何するつもりです?刀などあ奴に御向けになったら、それこそ奴の思う壺に…」
私がそう言うと目の前のテジャンは診察室に置いてある椅子を壁に向かって蹴り飛ばし、その椅子は無残に壊れてしまった
「それでも、あの方はあいつと今一緒なの辦公室傢俬だろう?この後どうなるか…考えたくも無いが、考えてしまうんだ!」

そう言いながら今度は机に両手を勢い良く置いてその大きな音が部屋の中に響き渡る

「…そうです、何とか今日まであの方は持ち堪えていらっしゃいました…しかし、今宵は昨日までとは違うと私も思います。」
「何故、そう思う?」
「今日の康安殿の警護が余りに厳重です。康安殿へ繋がる廊下から禁軍兵士がとにかく多すぎです。あれはやはり…そう言う事ではないかと…先程医仙が連れて行かれてから私も一度は傍まで行こうと思ったのです。数が尋常では無かった。」

そう、それを見て此処へ戻り、激しい後悔に一人打ち拉がれていたんだ。
もう、あの方を助ける術は無くなってしまったと…

私の言葉を聞いてテジャンは机に置いた手を離し、鬼剣をしっかりと握り、診察室を出て行こうとなさる
「テジャン…」
「俺は、我慢がならん。」
それだけを言ってあの方の元へいつもの大股で歩いて行く。
典医寺の大扉を勢いよく閉める音が聞こえる

私は医仙を御停めする事が出来なかった…そして、今テジャンが向かって行く事も最早、止めようとは思えない。

医仙も、テジャンも今、会わなければいけない気がする…
今、この時に会わなければ全てが終わってしまうような気すらする

あのテジャンであればあの方を御守する筈だと、あの方頭皮發炎を何時もの医仙のままこの典医寺に戻して下さると今は祈りに似た思いを抱いている。




あの方の元に行くのに典医寺から出ると直ぐ、禁軍の兵士の何人かが俺を見つけて捕まえようとする

ただ、禁軍とはいえこの康安殿から離れたところの兵士はまだひよっこばかりらしく捕まえようと三歩程俺に近づくと俺の一睨みだけでその場から五歩程後ずさる
俺の足を止める事も出来ずに道を開ける

しかし、それはきっと康安殿迄の事だろう
恐らく康安殿の中の警備はそれなりの連中が守っているから間違いなく小競り合いをせねばならん
そして、そんな警備までしてあの方をあの康安殿に留める目的など分かりすぎて嫌になる


そして、


そして、そんな康安殿へ何の抵抗も無く連れて行かれたあの方にとても苛つく。
何時ものジタバタも無く、連れていかれる等と…どこまで自分の身体を捨てれば気が済むんだ。
俺がこの婚姻話を聞いたら飛んでくる事位分かっているだろうに、何故、もう少し時間稼ぎをしてくれてないんだ。

貴女の事をこれほど心配して気が狂いそうになっている俺がどんな行動に出るか位、貴女のその頭で分かるだろうに

いや、俺の為か…全部。

俺の命の為にあいつの婚姻を受け入れ、そして俺が怒り狂ってら、さっさと康安殿の中に入って自分の意思が変わらない様に俺と会わない積りで抵抗もせずに連れていかれたのか?

もし、そうなら貴女は俺を知らなさすぎる。

俺は約束を違えたりはしない…貴女を無傷で天の国にお返しすると約束した。
これでは約束を違える事になる。

この婚姻も、今日の夜あの男の毒牙に掛かる事も全力で阻止する。

刀を抜くな?

刀など抜く必要もない。
どうせ、禁軍に俺に傷をつける奴など殆んどおらん。
刀を抜かずにあの方の所まで行って、あの方を無事連れ帰って見せる。

あの方を怒るのはそれからだ。

とにかく康安殿に行ってあの方の無事を確認しなくては…

確認できるまできっと、この胸の早鐘煩く鳴り続ける。
煩くてかなわん…

もう少し慎ましくしていてくれるならこんなに不安にかられる事は無い
あの狙われた日の事だって本当はあの方の顔が一瞬、浮かんだ
それでも、俺は打ち消していたんだ

また、何事か勝手に動いて俺の知らぬ所で危険な目に遭ってるんじゃないかと

でも、これは間違いないだろう…

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